Whole-Nano Japan 技術紹介

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防曇
コーティング

型番

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【1】 型番

代表的な型番を紹介します。
Philicon11が日本市場向けの製品です。
より耐久性に優れたPhilicon11Proも追って日本市場で販売予定ですが、Philicon11が既に十分な耐久性があると判断しているのでPhilicon11Pro用途は限られると思います。

型番 概要 TDS
Philicon11 ポリマー系
Philicon11Pro ポリマー+無機系
SPN-11 モノマー系

SPN-11は中国市場で販売している製品です。モノマー系なのであまり耐久性はありません。また日本市場において既に類似品がある為日本での展開は予定しておりません。
ただ、せっかくなのでいくつか画像と動画を紹介しておきます。

カーウィンドゥです。 SPN-11はエタノールベースのモノマー系なのでPhilicon11よりも粘度が低くスプレーし易く、車内など狭い空間では作業が楽です。(換気は必要です。)

ステンレス板に塗布しています。
作業は簡単です。

安全メガネやヘルメットのフェイスカバーに塗布しています。

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用途

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【1】 洗面室ミラー:防曇

洗面室のミラーは浴室ミラーと違い曇ったからと言って容易には水を掛けられません。
市場の曇り止めの中には水を掛けて防曇が発現するタイプもあり、そのタイプは洗面室ミラーには不適合です。
要求を満たす材料が無かったため洗面台ユニットはミラー背面にヒーターを内蔵しミラー表面が露点以下にならないような構造になっています。言うまでもなくユニット価格は高くなりますし電気代もかかります。
中国ではホテル用途などで引き合いがあるようです。

【2】 窓ガラス:防曇

右の写真は建物内のガラスパーティションの結露状態です。黒いテープの内側にPhilicon11が塗布されており視界はクリアです。ただ、日本ではガラスパーティションはあまり多くないのかも知れません。
窓ガラスにも使用出来ますが、窓ガラス以外にも例えばショップのショーケースなども対象になります。

【3】 その他の曇り止め

市場にある用途として車窓、メガネ・ゴーグル、フルフェイス型ヘルメット、ガラス蓋の調理器具などが挙げられます。
ただ、Whole-Nano Japanとしてはそれらの用途にはいくつかの理由からあまり積極的ではありません。

カーウィンドゥ

カーウィンドゥの曇りは安全運転の妨げになります。
しかし、エアコンを動作させることで曇りは解消できます。エアコンの着いていない車は日本では珍しいでしょう。
また、リアガラスにはヒーターが付いていますがPhilicon11が有効ならばヒーターシステムを使用することなくクリアな後方視界が得られると思います。

右は調理器具用に検討されたときの写真です。
効果はあるのですが人体への安全性を考えるとこちらから積極的に勧めるものではありません。

メガネ・ゴーグル類は身近な用途です。
中国ではモノマータイプを製品化しています。既に類似品は日本の市場でも存在しています。
ポリマータイプはあまり例がなくモノマータイプよりも安全性は高いのですが、まだ確認試験は行っていません。

【4】 バリアーフィルム

Philicon11のフィルムは防曇以外に酸素バリアー性、防油性など優れた特徴があります。
右の動画は防油性を調べた動画です。
段ボールにコートすれば段ボール内で油漏れがあっても外部への流出を防ぎます。

【5】 ヘッドライトコーティング

ヘッドライトの黄ばみが見られたのでまず研磨材で磨きました。現在ほとんどの車のヘッドライトカバーの材質はポリカーボネートです。
黄ばみは取れましたが少し研磨による曇りが出ました。それが写真の左部です。
そこでPhilicon11を塗布したのが右部です。塗布は単にスプレーし乾燥させただけです。 Philicon11が研磨後の凹凸を埋めて平坦化させ透明化させています。
プロショップの仕事に比べれば少し見劣りするかも知れませんがとにかく安上りです。 作業は簡単ですが技術的には簡単ではなく以下のような材料仕様が必要です。

  • 透明度が高いこと
  • ポリカにダメージを与えない溶剤(=水またはエタノール)であること
  • 屋外使用の耐久性がある事
  • ポリカに親和力・密着力があること
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使用方法

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【1】 保管

直射日光を避け、容器を密閉し換気の良い冷暗所に保管して下さい。

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【2】 塗布前作業

風が強い状態や基材表面が熱い状態では塗布を控えて下さい。
マスクやメガネ、保護手袋など保護具を装着して下さい。

塗布する素材の表面をきれいにしてください。ガラス表面に対しては最終仕上げにPhilicon13の使用をお勧めします。

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【3】 塗布作業

スプレーボトルはよく振ってからご使用下さい。
直接スプレーするか一旦コットンパフなどにスプレーした後そのパフで基材表面を拭く方法をお勧めします。 スプレーノズルと素材との距離は10~15センチが適当です。
スプレーボトルを滑らかに左右に動かしながらスプレーすると薄く均一な塗膜が得られます。

スプレー以外にも刷毛やスポンジローラーも使用出来ます。

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【4】 塗布後

塗布後しばらく放置すると乾きます。乾けば終了です。

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防曇学

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【1】 曇りに関連する理論
【1-1】 曇りの発生理由

鏡やガラスに発生する曇りは結露した細かい水滴です。 結露とは、空気中の水蒸気(水分)が凝結して水滴になる現象のことです。
空気中の水蒸気が増える=相対湿度が高くなることで、結露は発生し易くなります。 例えば、車などの狭く閉鎖された空間で乗車人員が多いと人体から生ずる水蒸気で社内の湿度が上がり窓ガラスが曇り易くなります。
空気中の水蒸気量が飽和水蒸気量を超えると気体の水蒸気は凝結し液体の水に変化します。 そのような凝結が始まる温度を露点と呼びます。
そして、ガラス(鏡の表面がガラスの場合も含みます)の表面温度は周辺の空気の温度よりも低いため、ガラス表面近くの空気が冷やされ露点以下になり結露が生じるのです。
もしガラスの表面温度が周辺の空気と同じ温度であれば結露はずっと少なく済みます。しかしガラスには0.9以上の放射率がありガラスの持つ熱は表面から放射によって失われ、ガラスの表面は周辺の気温よりも低い温度になります。

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仮に結露が生じても、結露した水がお互いに結合して連続した水膜になれば曇りは生じません。 しかし実際にはガラスの表面の小さな埃や油分、傷等がピン止め効果を起こして水膜の広がりを妨げます。また、低温で曇りが生ずる場合もうひとつ水の表面張力も関係します。水は温度が低いと表面張力が大きくなり、薄く広がり難くなります。
薄く広がらない水は表面張力によって曲面を形成します。
光は曲面に当たると様々な方向に反射し、また水滴を投下して鏡面で反射した光も水滴のレンズ効果で様々な方向に向かいます。 こうして乱反射した光は合成されると白色になります。 これが曇り現象です。

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纏めますと、①湿度が高い、②気温が低い、③高放射率材質、④表面の不均一さ(埃・傷など) の4因子が揃うとガラス表面に結露が生じ曇りになります。

【1-2】 防曇方法

最も重要なことは鏡・ガラス表面をクリーンにすることです。
表面に油やほこりが付いていたり、スケイルがあっては水膜の広がりをピン止めしますので曇り止めは困難です。 傷が付いていてもピン止め効果が起きます。

ガラスクリーナー

最もポピュラーな方法はガラスクリーナーを用いてガラス表面をクリーンにすることです。
しかし、界面活性剤系のガラスクリーナーでは油分や埃は除去出来てもスケイルや傷に対してはあまり効果がありません。
研磨粒子入りのガラスクリーナーはスケイルの徐子が可能です。 しかしあまり研磨しすぎると細かな傷が増えてしまい水膜の広がりに支障が出ます。特にダイアモンドクリーナーでフロントガラスを磨くことはお勧めできません。

Whole-Nanoのお勧めはPhilicon 13です。
ナノ粒子による傷のつかない機械研磨に加えて化学研磨作用があり、研磨直後のガラスは超親水性である程度曇りにくくなります。
しかし、Philicon13を用いてガラスを研磨しても研磨直後から汚れが付き始めます。スケイルも成長します。 そして曇り易くなります。
それを防止する為に曇り止めコーティングが必要なのです。

界面活性剤コーティング

曇り止めの最もシンプルな方法は鏡・ガラス表面に界面活性剤(石鹸・洗剤)を塗ることです。
界面活性剤が結露水の表面張力を下げるので水滴上にならず水膜になって乱反射を抑制します。
市販のメガネ用曇り止めなどはこの効果を利用しています。

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しかし、通常の界面活性剤では結露した水に界面活性剤が溶け込み水とともに流れ落ちてしまう為、数度の結露で鏡・ガラス表面は曇り止め効果が無くなり曇り易くなってしまいます。

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超親水性コーティング

超親水性コート材表面に結露した水はコート材表面に広がることでお互いが繋がりほぼ均一な膜厚の水の層になります。
表面が平滑なので反射光や透過後鏡表面で反射して戻った光は曇りのない平行光として目にする事が出来ます。
ただし結露水量が十分でない場合は、水膜が超親水コート表面を覆いきれず若干の曇りが生ずることがあります。

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湿度がある程度低く、超親水コート材表面にゴミや異物が付着した場合、光の散乱になりますが、異物の量が少なければほぼ曇りのない状態に見えます。
ネットではよく超親水性表面の異物等は水をかけると異物の下に水が入り異物を浮かせて洗い流し、クリーンな表面になると書かれていますが、完全には正しくはありません。
無機物や油のような異物では水が異物下に浸み込みやすいですが、有機物の中にはガラスや超親水コート表面に強く付着し水に浮かないものもあります。 化学的には炭酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜硫酸基をもつものが代表です。それらの結合力は水よりも強いです。
具体的にはシャンプー・リンス類や洗剤などにそういう基が含まれていることがあり、乾燥するとガラス・超親水コート表面から離脱しにくくなります。

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超親水表面に異物が強く付着した状態で結露が発生すると水滴は異物に邪魔されて平坦になるまで広がる事が出来ず曲面を形成してしまいます。
その結果、光の散乱が起こり曇りとして視認されます。
水の量が異物の高さを乗り越えるくらい大量であれば連続した水膜が形成されるので曇りは消え去ります。しかしある程度乾燥が進むと水膜は再び不連続になり曇りが生じます。
強く付着した異物を取り除くための機械的作業が必要です。
酸化チタンなど光触媒を用いて異物を分解する技術もありますが、屋内では紫外線量は屋外の0.1%しかなく光触媒も十分に機能出来ないことが多いです。

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吸水性コーティング

吸水型の曇り止めコート材は超親水コート材と働きが異なります。
吸水層表面が平滑な場合、結露した水は吸水層に(部分的に)取り込まれ、平滑な表面を形成します。
従って反射光は平行光となり拡散=曇りのない状態になります。

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一部のサイトでは吸水の限界を超えると曇りが出ると書かれていますが、実際は、余剰な水は吸水層表面に一度留まりますが、次第に表面張力で集まり流れ落ちます。
また、吸水層が鏡・ガラス表面から剥離するとも書かれていますが、これは材質次第で改善出来ます。

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吸水型コート材に異物が付着した場合は超親水コートは超親水コート材と同様に若干の散乱が起きます。

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異物が付着した状態で結露が生じた場合、結露水は異物の無い吸水層表面から浸み込みますので平坦な表面を維持し易くなります。
従って超親水コート材よりも異物がある場合の曇り止め効果に優れた結果が得られます。
ただ、吸水型コート材は有機物系が多く、異物を取り除こうと強く擦るとダメージが起こり易いです。

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FAQ

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【1】 性能について

市販の曇り止めと何が違うの?
耐久性が違います。また、水を掛ける必要がありません。
市販品の多くは界面活性剤耐Pの曇り止めです。従って数回結露すると有効成分が溶け出して効果が落ちます。
また、市販品には水を掛けることで曇らなくなるという製品もあります。カーウィンドゥ内面や洗面室などでは容易に水を掛けられないこともあり用途が限定されます。
Philicon11はポリマー型を更に架橋反応させることで水に難溶性にします。従って結露などに対しては数ヶ月の耐久性が得られます。
ただ水に不溶という訳ではないので長時間水に漬けると溶けます。 また粘性のある水なので細かいところにスプレーしたい場合は難しいと思います。
塗膜は透明ですか?
極めて透明です。
ガラスに近い屈折率なので膜の存在を認識しにくいくらいです。
どれくらいの期間性能が持続しますか?
膜厚と与える水の量に依りますが洗面室の鏡の結露レベルならば数ヶ月持続します。
温水とメラミンスポンジを用いても剥離に1時間かかることもあります。
防曇性能が落ちる場合はほとんどが埃やカビなどによる汚染です。防カビ剤を塗布することで復活するケースが多いです。
超親水性能もありますか?
超親水性ではありません。
疎水性と呼ばれるような表面です。水を掛けると水膜は局所に集まり流れます。
保存は出来ますかか?
未使用ならば製造後2年まで使えます。
長期間使用していない場合は使用前によく攪拌して下さい。スプレー缶の場合は良く振って下さい。
使用途中の状態で保存した場合はノズル部分が固まることがあります。申し訳ありませんが、その場合は再使用が出来なくなりますのでご注意下さい。
【2】 用途について

塗ってはいけないものってありますか?
以下の用途には使用しないで下さい。

1) 人体や動植物
有害物質は含みませんがすべてのコート材は呼吸器系などにダメージを与える可能性があります。
2) 食べ物、食器や調理器具など
毒物ではありませんが、消化器系などにダメージを与える可能性があります。

【3】 施工について

注意点は何ですか?
通常の水系塗料と同じです。
火気や作業環境などには注意が必要です。
スプレーボトルは良く振ってから使用して下さい。
スプレー以外にもディップ、ロール、ナイフコートなど様々な塗布方法が選べます。
1Lの塗料でどれくらいの面積に塗れますか?
平滑な基材なら0.5%濃度品で8-10m2に塗れます。
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